和式四弦 レアエワル LE'A'EWALU 絹糸弦 鈴木慎一 Shinichi Suzuki







興味深いのは中国からは西方に「絹」がもたらされ代わりに西方からは中国に「渡来四弦」がもたらされたということです。この史実からも渡来四弦と絹糸弦の組み合わせ は西の文化と東の文化の融合であり「世界はひとつ」というシンボルそのものではないでしょうか。

アメリカとの付き合いは1841年、アメリカ捕鯨船ジョン・ハウランド号が難破船に乗っていた日本人5人を救助した事案(ジョン万次郎伝)から始まったといわれていますが、せいぜい175年程度であります。
対してイスラム(中東アラブ諸国、トルコ、イラン)とは2000 年以上もの長い付き合いということを知らない日本人が大勢いることはたいへんに残念なことです。

それにしても世界各国で名前や形を変えて現在も残っているバルバットの末裔たちですが、日本ではどうして独自の名前を持った四弦樂器がヤイリから一五一会なる楽器が出るまでの長い間、存在しなかったのでしょうか。もしかするとあったのかもしれませんが表には出てきていないことは事実。

同じ四弦でいえば西伝のウクレレを弾いたことのある日本人と東伝の琵琶や三味線、阮咸、月琴を弾いたことのある日本人ではどちらが多いのでしょうか。我々でさえも琵琶については骨董品の弦の切れたような我楽多しか触ったことはありません。家庭環境のおかげで箏が一番身近な雅樂器でありました。三味線に至ってはメンテナンスが大変でとてもじゃないですが気軽にいつでも使えるような状況ではありません。普及させるには性状的にも敷居が高いことは三味線を弾かれる方は皆さん、痛感されていることでしょう。

敷居が高いのは結構なのですが高過ぎるのはいかがなものだろうかとそれこそ40 年以上前から感じておりました。そんな経験が今回の和式四弦なる樂器の開発に大きな影響を与えているのであります。



なるべく合理的な仕上がりを目指すということが雅樂器においては許されないことだと思い続ける先には文化の絶滅しかありません。変わらない良さの必要性は認めますが固執する余りに衰退の一途を辿ってきた過去からの大きな流れを止められない現実を傍観しているだけでは大切な技術や職人は守ることが出来ません。経済的視点からも需要と供給のバランスをしっかりとコントロールして未来に伝承させていける状況を作り上げることが弊社の事業使命のひとつだと痛感しております。

かたや中国では日本とは違い、阮咸は小阮、中阮、大阮とサイズに分かれながらもウクレレ同様にメロディ楽器としても国内で進化・普及していることはYouTubeでも数多くの演奏映像を見てご存知のことでしょう。中国における自国文化を守ろうという意気込みは我々日本人は大いに見習わなければいけないと思います。

彼等なりに過去の中華四弦を現代版に昇華させてきたのは刺激的な事実でした。我が国では琵琶にしても月琴にしても普及状況をみれば渡来四弦のまま延々と使い続けてきた、と言われても反論は難しいでしょう。このように最新阮咸はネックを見ただけでも、かなり弾きやすい形状に進化しており実に見事なものです。

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外国から「日本人は西洋かぶれ」と揶揄されるのは気分の良いものではありません。地理的にも人相的にも文化的にも間違いなく日本人は東洋人です。白人が日本の着物を着ている姿を見かけたら、日本人にはどう見えるのでしょうか。コスプレにしか見えないのでは?

上から下まで白人向けの洋風服装を着衣した日本人は日本人から見れば違和感はないのかもしれませんが白人から見れば奇異な存在に映っているはずです。

日本人の大部分が明治維新~昭和前期という短期間で古くから着慣れていたはずの和装を捨て、洋装に移行したのは脱着が楽で短時間で済む、デザイン幅が和装に比べて格段に広いからでしょう。それほど商品力というものは自国の伝統文化を根底から変えてしまう影響があるのです。これからもiPhoneのような恐ろしいレベルの商品が日本に入ってくるはずですが日本なりのエッセンスをいつまでも大事にするためにもせめてソフトの部分でオリジナリティを出し続けていって欲しいものです。

日本人がいつまでも日本人で在り続けるために自国伝統自国文化を未来に継続させていくことの意義を国民総員で再考いただければ必ず、明るい日本の未来が開けていくと信じております。