和式四弦 レアエワル LE'A'EWALU 絹糸弦 鈴木慎一 Shinichi Suzuki
マテリアルの入手困難度、塗師にとっての扱いにくさにおいて和漆は輸入漆と比して生産手間と人手間が格段の違いでかかっていきます。それこそ躯体担当、塗装担当とそれぞれの技術力の差で出来の良し悪しは大きく変わります。レアエワル内部でも賛否あるところではありますが「和」にこだわる以上はやむを得ず、と決定いたしました。
今後、多くのメーカーや個人から和式四弦が多く出てくると思われますが名工・職人たちをリスペクトし鼓舞すべく出来不出来のランク付をLE'A'EWALUでは疑義や批判を覚悟で日本刀を参考に独自に7ランクに分けることに致しました。
日本刀では実際に山田浅右衛門が200以上の刀を試し切りして評価しているわけですが和式四弦をそのような判断をすることは物理的にも容易ではありません。しかし、日本刀のように和式四弦もいろんな人間が関わって天下五剣同様に天下四弦とでも呼ばれるような素晴らしい作品が後世の日本人たちを楽しませるようになれば琵琶のように廃れることはないでしょう。それに残した作品がヴィンテージとして後世までも大事にされることを望まない作家はいないはずです。
今の国産ウクレレ業界を見ていると未来においてヴィンテージとして重宝される樂器は少数の様な気がしてなりません。
しかし和式四弦という新ジャンルが展開されれば国産ウクレレビルダーにも大きな勝機が開けると思います。このホームページを見て共感できる撥弦樂器ビルダーのみなさん方、一緒に和式四弦の世界を日本刀同様に広く深くしていきませんか?和式四弦、和式四弦改は歴史に名前を残すひとつのチャンスです。
ハワイ産に負けないレベルの和製ウクレレにも関わらず正直なところ、ウクレレの評価が低いとは思いませんか?本場ハワイのビルダーがハワイアンコアを使って販売しているウクレレと日本人の作る和製ウクレレが同じ土俵で戦うのはかなりのハンデがあります。それはウクレレはハワイ語の樂器だからであります。
フランスのメジャーメーカールイ・ヴィトンの製品がもし、日本国内で製造されていたら日本人は今のように購買意欲を唆られるでしょうか?それと同じことではないでしょうか。
しかし、逆に和式四弦をハワイアンメーカーが販売しても日本国内だけではなく世界市場で売れるでしょうか?結果は言わずもがな、でしょう。LE'A'EWALU は日本人弦樂器ビルダーたちで新しい日本最強の撥弦四弦樂器の新しい歴史を作っていきたいと思っています。
さて、LE'A'EWALU だけのナイロン弦を張った試作品レベルでは鈍、竹光ですが、丸三絹糸弦を張ってようやく最下位の業物になり、躯体・セイレン弦楽器工房や塗装・喜八工房、糸巻き・後藤ガット有限会社という現代の名匠たちの合力から生まれた叢雲・瀧波はまさに最上大業物です。
1台10000円もしない凡物ウクレレに「みやびやか」が理解できないよう様な人物が高価な絹糸弦をわざわざ張る人がいないでしょう。
通りすがりの野良犬に松阪牛10kgを餌であげるようなものです。一般的な塗装とは費用も期間もとんでもなくかかる漆塗りにしても同様、竹光レベルの躯体に万単位で塗装処理を行なうのは尋常ではないからです。それなりの躯体でなければ漆塗りをすることは有り得ないでしょう。漆器のことを多少は知っている方には本体よりも塗装の方が経費と時間がかかることは常識だからです。
もし、叢雲・瀧波を否定できるレベルの和式四弦を作り上げられる工房があれば遠慮せず大いに作品を公開して世間の評価を受けてください。
新ジャンルが盛り上がるためにもランク設定があれば職人がそれぞれのランクの高見を目指す目標にしていけば良いと考えております。ギター、ウクレレ業界では販売価格で大方が決められているような上位下位分けですが、和式四弦ではこういった「こだわり」がどこまで付帯されているかの方が分かり易いのできっと社会的にも受け入れられることでしょう。
プロレスにはない大相撲の横綱、大関、関脇、前頭のようなランク付は日本人は昔から嫌いではないはずです。
和式四弦・和式四弦改では最低級躯体でも上質絹糸絃を使わなければ良業物以上ではありません。渡来四弦樂器扱い、もしくは鈍(ナマクラ)扱いです。ラッカーでなく漆塗装で上級の大業物になっていきます。日本人にとっての和漆塗装こそが最上大業物、輸入漆塗装は1ランク下の大業物扱いという独自の番付です。
これは和式四弦を通じ、漆工芸と絹糸弦が見直され供給を上げるための重要な仕掛だと思っています。若い職人を育てるためには和式四弦に関わる業種が社会的認知度が上がることが必要だからです。そのためにもハワイ産ウクレレとは一線を画すJAPANESE-4-STRINGS和式四弦を2020年をブレーク目標年にし世界に発信されることを切に期待しております。
外国人も日本に来て、わざわざウクレレは買わないでしょうが和式四弦がそれなりに日本国内で認知されていれば手に入れたいと思うのではないでしょうか?浅草や京都、金沢の土産屋に和式四弦が並んでいても違和感はないと思います。
余談ですがフリクションペグを選択した理由はシルエットがギアペグでは大きすぎて見た目が不満だからです。ネジの締め直し機会が増えるとしても全く選択する気にはなれませんでした。しかし世界に誇る日本の糸巻きこと後藤ガット有限会社Planetary Uklele Tuner UPT採用により従来よりもリスク軽減を最小限にしております。ただバランス的にみればギアペグもヘッド形状の大きいミニギターサイズになってくると見栄えもフリクションペグにはない良さが出てまいります。和式四弦もギターサイズを出すときはギアペグヴァージョンになるかもしれません。
実は糸巻きが琵琶や三味線などのように巨大な形状でないから和樂器ではない、との厳しい指摘もありましたが昇華させるということは「より良いもの」を追求していくという観点から許容しました。もし平安時代に小型の高性能な糸巻きがあれば間違いなく採用されていると思うからであります。
経験ある方には分かると思いますが糸巻きは大きいほどライブ中にマイクといった周辺機材などに接触する可能性が高くなることも判断材料のひとつにしました。また大きい分、演奏による振動によって調音が変化しやすいのは間違いありません。だから三味線が昔の形態を保持しているのはLE'A'EWALUでは不思議な現象だと思っています。どうしてエレキギターのように新しい形がどんどん生まれてこないのでしょうか?最新スマホ片手にした奏者が旧態依前とした昔ながらの三味線を弾いてる光景は私共には滑稽に映ります。
変えないことが和樂器の伝統なら、どうして伝統曲以外のジャンルも演奏するのでしょうか?まさしく樂器製造業側の思考停止以外のなにものでもありません。挑戦しても否定されるのを恐れているのではないでしょうか。三味線がどうしていまだに小型ペグに転換していかないのか理解できないですね。形は旧態依然だとしてもメカニズムはせめて最新でもいいのではないでしょうか。
LE'A'EWALU 和式四弦は日本伝統工芸品・絹糸絃ですがナイロン弦に比して少々、扱いにくさを持つ絹糸を採用することは和樂器たる最重要事項のひとつである「粋」を許容したのであります。
簡便性ばかり追求されがちな世情ですが、あえて現代の風潮に反旗を翻す意味も含めて和式四弦を世の中に送り込むことにいたしました。
この画像は滋賀県木之本町、賤ヶ岳の雪解け水を使い、桑の新芽を食べて育った蚕による春繭だけを用いた丸三ハシモトの和樂器用絹絃です。
ウコンによる黄色がたいへん色鮮やか。
耐性はナイロン弦やフロロカーボン弦に比べて少々劣りますが絹絃は柔らかいテンションでありながら音の立ち上がりが良く、まろやかなその音色そして触れたときの指先に感じる独特の抵抗感が最大の特長です。まさに「有機質感」という表現が当てはまるでしょう。弾いてみても判からない、という方は判るまで触れてみてください。日本人なら何かを感じるはずです。
国産絹糸が作られ始めたのは弥生時代と言われていますが、まさに絹糸は「生きた歴史」のひとつではないでしょうか。今でもシルクの生地は最高級でありこれからも不動の価値であることは間違いありません。
絹そのものが耐性が低いことも「絹糸普遍の趣向」と思える方にしか絹糸弦が扱えない理由のひとつです。といっても丁寧に扱えば半年は問題なく使えます。撥やピックを使うと絹糸は徐々に破壊され断絃時期は早まってしまいますが、音色から言えば撥やピックから発せられる音色よりも拇指で鳴弦の如く弾く音色の方が格段と素晴らしいことは間違いないと特筆しておきますが樂器があくまでも奏者が主役です。我々の想像しなかっった様な扱い方があれば逆に教えてもらえれば、と思っております。