①日本における弦楽器の始まり(鳴弦之儀)
鳴弦は様々な魔気、邪気を払う効果があるとされ平安時代以降、神聖な祭祀をはじめ、高貴な人々の日常で多用されてきました。そして弦樂器は弓に張った弦を弾くことにより発する弦音から始まったとされています。
今でも和弓では通の射手ほど弦音については高音ほど好まれる傾向の方もいるようです。そのためにも市販されている高額商品も沢山有り、皆々好みの弦を選択・装着します。商品名だけでも調べてみれば驚くほど出回っていることがわかるでしょう。
鳴弦は単音ということが最大の特徴ですが縄文時代という3~4000年も以前から弓は存在していると言われていることから弦音は日本人の歴史そのものなのでしょう。弦樂器の歴史はまさに神事とシンクロしています。
弦が生み出す音色は聖なるヴァイブレーションとして太古の人々にも強く感じられたからこそ鳴弦之儀が確立され、現代までも残っているという事実からも我々のDNA にも深くデータが刻み込まれていることは疑う余地もありません。響という文字は郷という文字と音という文字の合体という、まさに郷愁という言葉と直結していることは興味深いことではないでしょうか。響(ひびき)なる国産高級ウイスキーがありますがネーミングだけでも日本人の心を熱くさせてくれる気がします。
現代でも祭祀において「鳴弦之儀」という形で継承されておりますが、このように元来、日本人にとって弦は尊崇対象の型のひとつであったのです。
やがて弦の張力を変えることにより様々な音程差が生まれることを利用し、音程差の違う複数の弓を並べることで琴の原型が出来たと思われます。時代の流れと共に樂器の形態や演奏方法も洗練されていったことは言うまでもありません。
(和琴を奏でる)藤原緒嗣ふじわらのおつぐ
(宝亀5年(774年)-承和10年(843年))頃
『前賢故実 巻之3』明治元年(1868年)菊池容斎編・画
現代の麻製和弓弦
現在、販売されている弦の種類は多くネーミングひとつみても作者たちのこだわりが感じられます。たとえば・・・
極、ZERO、正弦、戒、千本弦、かえる弦、弓神、飛天、金龍、吟龍、昇龍、よいち弦、真、ひのくに翔美弦、飛翔弦、天弓弦、流星、ヤマト、吟、昴、光、あすか弦、弦音、響、金響、響R、梓弦、春風、富士、的印、桂、龍鳴、鎮西弦、直心、ひむか等々
とくに「響」というのはウイスキーにも存在していることからも日本人の好きな固有名詞なのでしょうか。